Interview

開発者の創意工夫の結晶を
「特許」という形の価値へ

Yuno Fujiyama

法務・知的財産本部 知的財産部 第五課
2020年入社
農学生命科学研究科応用動物科学専攻修了

現在の仕事

交換レンズに関する発明の出願と権利化

Profile

Yuno Fujiyama

入社動機

大学で研究を続ける中で「研究者や開発者を支える仕事をしたい」と思うようになり、知的財産に力を入れている企業を中心に就活を行いました。ニコンで働く皆さんの真面目、誠実、穏やかな人柄に魅力を感じるようになり、入社を決意しました。ニコンでならのびのびと働くことができる、ライフスタイルが変化しても仕事を続けられると思ったのも大きな理由です。

異動歴 ※名称は当時のものです

2020年04月:法務・知的財産本部 知的財産部 第五課

One Day

09:00:在宅勤務開始、メール確認
10:00:拒絶理由通知への対応打合せ
12:00:昼食
13:00:特許事務所、発明者と面談し内容の掘り下げ
15:00:面談内容を踏まえて請求項(権利範囲を決める部分)の作成
17:00:著作権について勉強、知的財産部の若手でのチーム活動のための調べもの
18:30:在宅勤務終了

交換レンズに関する
発明の出願と権利化を担当。

現在の仕事内容を教えてください。

ニコンでは毎年様々な新製品・システムが開発されています。これらの製品に込められた創意工夫や発明を特許として出願、権利化しているのが知的財産部です。私が所属する知的財産部第五課は、主にカメラと交換レンズに関する発明の出願と権利化を担当しています。ここ一年で私は十件ほどの出願を担当することができました。最近ではNIKKOR Z レンズで初めてとなるパワーズーム搭載レンズの出願を担当しました。また、出願と権利化の他に、他社の技術動向調査や自社特許の棚卸なども行っています。棚卸とはいわば特許権の維持要否の見直しです。特許権は出願から最長20年間の権利がありますが、維持するためには費用もかかります。その費用対効果をジャッジすることも仕事のひとつです。

特許出願・権利化の流れと
そのポイントを教えてください。

出願と権利化に向けた動きは新製品開発の設計段階からスタートします。設計段階から、設計担当者にヒアリングを行い、どのような技術や創意工夫を行おうとしているのか、類似の先行技術がないか、どの部分が特許として出願できるかなどを検討します。また、権利化後の事業における活用可能性も並行して検討します。そこで出願可能と判断した場合は、発明者、特許事務所と三者で面談をして内容を固め、出願するという流れです。また外国に出願して権利化する必要があるかどうかも子細に検討します。一連の流れは知的財産部が主導し、権利化後に特許を最大現に活用できるように常に戦略を練りながら行っています。出願・権利化を行うには、その技術や発明の価値を正確に把握する必要があります。特許請求の範囲と明細書を作成する際に、発明者の意図と齟齬があってはなりません。また、開発中の製品のみにとらわれないことも大事です。将来開発される製品に転用できる可能性も考慮して、技術思想を広げるといった視点も重要なポイントです。将来の製品を考慮しながら公知の技術と差別化した特許請求の範囲をどのように書くか、論理的思考力も問われる仕事です。

製品開発に込められた
ひとつひとつの物語。

知的財産の仕事の面白さ、やりがいをどのような時に感じますか?

知的財産の仕事は開発者の創意工夫の結晶を「特許」という権利にする仕事です。先にも触れたように、出願に際して開発者に発明に関わる内容をヒアリングするのですが、その際にどのような経緯でアイデアを思いついたのか、どんな点で実現に向け苦労されたのかなどの開発秘話を伺うと、製品の歴史を感じることができ、とても興味深いです。製品設計には開発者の想いが詰まっています。例えば、交換レンズを軽くするという目標に対して、部品点数を抑えるのか、素材を変えるのか、アプローチ方法は様々です。家電量販店などで自分が関わった製品が並んでいるのを見ると、そこに込められた技術や発明、開発に関わった方々の想いが頭に浮かび、嬉しくなります。

これまででもっとも印象深い案件はどのようなものですか?

製品への理解を深めるため、そして搭載されている技術思想を把握するために交換レンズの製品分解に立ち合ったことです。文章で示されている特許請求の範囲と交換レンズとを照らし合わせながら分解し、議論を行いました。言葉一つで特許請求の範囲の解釈が大きく変わること、交換レンズが非常に精密に作られていることが実感でき良い経験になりました。特許請求の範囲は句読点ひとつで意味合いが変わります。どう書けば一番効果的なのか、特徴をとらえているのか、実際に製品を見ると見ないでは大違いでした。その意味でも交換レンズの分解に立ち合ったことは大きな経験になりました。

将来、子どもが誇りに
思える母親になりたい。

将来の目標、今後のキャリアについてはどのように考えていますか?

大学時代に希望していた、研究者や開発者を支えるという目標は、半分実現していると感じています。知的財産の仕事は開発者が発明してくれないと出番はありません。つまり、研究者や開発者を支えていると同時に支えられてもいるのです。ニコンの場合、BtoC製品の特許は出願から管理、場合によっては取り下げまで、製品のライフサイクルを担当者ひとりが継続的に担当します。今後も自分の担当した製品について、特許という側面からその価値を最大限に発揮できるよう心がけ、開発者に還元していきたいと思います。
また、個人の目標として、将来子どもができたときに胸を張れる母親でありたいと思っています。ライフスタイルが変わっても、ニコンで生き生きと働く。そんな母を誇りに思ってもらいたい。ワークライフバランスは仕事と家庭の時間の取り合いではありません。それぞれを輝かせる相互作用です。まだ私に子どもはいませんが、ニコンはそれが叶えられる企業だと考えています。

私の2030年のありたい姿

「ニコンの未来、社会の未来」を自らが作っていく、というプライドを持った自分です。特許の仕事は出願、登録になって終わりではありません。20年先の未来まで価値のある特許を作ることで、ニコンの技術を保護することができます。今お世話になっている知的財産部と開発部の皆さんの背中を見て学びつつ、今後ニコン知的財産部に入社される皆さんと一緒に未来を作っていきたいと思います。

Off Shot!

子どもの頃からあざらしが好きで、水族館に行くと必ず写真を撮ります(写真は水流を感じているあざらしの写真です)。あのゆったりした流線型のフォルムや子犬のような好奇心の旺盛さがたまりません。ちなみに私も普段はあざらしのようにゴロゴロとしているからでしょうか、よく似ていると言われます。

※社員の所属やインタビュー内容は取材当時のものです