ソフトウェア・システム技術

高度で複雑な機器においては複数の部品などを連動させ制御する必要があり、システム技術は各部品の挙動を全体最適化する役割を担います。一般にこれらの制御は電気信号によりおこない、制御プログラムを設計、実装するソフトウェア技術も不可欠となります。ニコンでは光学機器を扱っており、光からの情報を電気信号に変換し、ほかの系、例えば駆動系の制御に用います。設計や製造においても、対象とする系をモデル化し計算により事前に起こりうる現象を予測する(シミュレーション)といった技術もニコンにおける高度なものづくりを支えます。

自動的に被写体にピントを合わせる(合焦させる)AFシステムは、カメラのピント合わせを簡単にするだけでなく、産業用途でも自動で精度の高い計測をすることができます。カメラでは高速に動く被写体に追従することや、露光装置では高速に動くウェハ面に対し常に精度よく回路パターンを結像させることのために不可欠な技術です。

イメージセンサーから得られた電気信号を画像に変換する画像処理専用の演算装置により、センサーで取得した信号を高速に画像として出力することができます。色や明るさの調整、コントラスト調整など重要な役割を担います。ニコンでは、カメラにおいて、高解像化に伴う大量のデータを高速に低消費電力で処理するために、効率のよいアルゴリズムの設計がなされています。

計測機や加工機などにおいて、対象とする物体をステージ上に置き、駆動指示量にしたがって正確に駆動できることにより、所望の箇所を計測・加工することが可能になります。高精度、高速に制御できることにより、精度の良い計測、加工を速く行うことができ、産業用製品においては、高品質な製造、生産性の向上につながります。ニコンでは測定機や光加工機をはじめ、露光装置、顕微鏡においてもウエハや試料を置くステージの高速高精度な制御が重要となります。

カメラなどで撮影する際に手ブレによる撮像への影響を補正することによりクリアでシャープな画像を得ることができます。特に、手ブレの影響が出やすい夜景や屋内等の暗いシーンや、望遠レンズで効果を発揮し、手持ち撮影の幅が広がります。補正範囲が大きくなる望遠レンズの使用時ではレンズおよびカメラ内の双方で補正に対応します。シャッターを押す瞬間の短い間にブレを検知して補正する必要があります。

人工知能(AI)に含まれる深層学習は、大量のデータから学習して得たモデルに基づき、画像や音声の認識や自然言語の処理などを特定の条件において大量に処理することができます。ニコンでは主にカメラの被写体認識や顕微鏡の細胞の検出などに用いられます。産業用途ではX線CTにおける微細な欠陥の検出をしやすくします。深層学習は画像における特徴抽出と相性がよく、ニコンの製品へのさらなる適用が期待されます。