精密ガラスモールド
技術概要
精密に加工した超硬材の成形型を用いて高温下で軟化させたガラスを加圧成形することにより、研削研磨をせずに同じ形のレンズを大量に生産できます。特に、非球面レンズの研削研磨は難易度が高く工数がかかるため、非球面形状の型を製作すれば球面レンズと同様に量産できることは大きな利点です。
ガラス素材と型を必要な温度まで上げて、プレス成型し、温度をガラス転移点以下まで冷却します。ガラスは組成によって軟化温度や型材料との相性も異なるため、光学特性の要求も考慮しつつ成形しやすいガラスの組成開発が必要となります。また所望の形状を踏まえた金型の精密加工、融着を防止するコーティングを工夫し、さらに精密な温度と圧力の制御による成形プロセス開発も行います。
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量産が必要となるカメラレンズなどの民生品に用いられており、さまざまな硝種においても生産性を損なわないように、硝種の物性や化学特性に応じた金型の工夫が必要です。
ガラスは樹脂と比べて成形が高温でありながら、レンズなどの光学部品用途では表面を高精度な鏡面にすることが必要になります。なおかつ高荷重での成形を必要とするため、過酷な環境下での量産が可能な金型や成形プロセスの開発が必要となります。小型化・軽量化の実現に有効な非球面レンズの製作では球面にはない複雑な成形シミュレーションが行われています。
技術の適用事例
カメラ交換レンズ
球面でない曲面を持つ非球面レンズは、ディストーション(歪曲収差)や球面収差などさまざまな収差を効果的に補正可能です。特に広角系のレンズで問題となるディストーションのコントロールに大きな効果を発揮します。ディストーションは、被写体がレンズを通して結像する際、像高(画面中心からの距離)によって倍率が異なるために生じる収差(像の歪み)で、レンズ中心周辺から非球面を用いて連続的に屈折力を変化させることで補正できます。また、非球面レンズ1枚で、複数枚の球面レンズに相当する収差補正効果が得られるため、球面レンズに比べてレンズの小型化や軽量化に大きく貢献しています。
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成形
成形は型を用いて材料を所望の形にする方法です。一度、型をつくれば、大量に同じものを安く作ることができます。ガラスだけでなく、金属、樹脂などの幅広い材料に用いることができます。一般には、温度をあげることにより材料を柔らかくして形作るため、型にはその温度で変形しないような材質を用います。成形の良し悪しを左右する型の設計や加工、表面処理も重要となります。樹脂のような融点が低い材料では、樹脂を熔かして金型に流し込み冷やして成形する射出成形という方法を用います。
カメラボディなど生産量の多い部品においては、成形による生産方法が適します。小型軽量が求められるカメラボディでは複雑な形状を強度を保ちつつ一体で成形することが求められます。レンズの鏡筒(レンズが入っている筒)には樹脂が用いられており、円形のレンズが精度よくはまるように限りなく真円度をもつ成形が求められます。材料の選定および金型の設計・加工、効率よく安定生産ができる製造プロセスが重要となります。
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