反射防止膜
技術概要
反射防止膜により、例えば、メガネレンズの内側表面の反射光を抑え透過してくる光をより見えやすくすることが可能です。カメラレンズや顕微鏡対物、投影レンズなどレンズ枚数が多い光学系では、光の反射を最小限に抑え像のコントラストを高めることができます。また、レンズ界面で反射した光は複数枚あるレンズの各面で多重反射して、ゴーストやフレアの原因となり、これを低減する役目も果たします。
異なる屈折率を持つ材料の境界を光が通過するとき、一部の光が反射し、一部の光が透過します。反射防止膜は、光の干渉現象を利用して特定の波長の光の反射を減少させるよう、膜に用いる材料の屈折率と厚さを設計します。材料の境界における屈折率差によって反射が起こるので、例えばナノ粒子膜によって空気に近い屈折率の膜を成膜し、空気とレンズの境界での反射を抑える方法もあります。カメラのような可視光の波長帯域を扱う場合、各波長において反射が防止できる様、異なる屈折率の材料による多層膜を設計します。
成膜には様々な方法があり、求められる精度や達成したい膜の機能や材料に応じて最適な方法に決定します。
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ニコンでは幅広い光学機器を扱っており、反射を抑制するレベルや対応する光の波長帯域など異なります。半導体露光装置の投影レンズでは、波長帯域は狭いながらも、多くのレンズ面における反射の影響を極限まで抑え透過率を向上させる必要があります。カメラレンズや顕微鏡対物レンズでは広い波長帯域において反射を低減することが求められます。生産における成膜工程では、製品仕様に応えるために高精度に成膜することや大量生産に対応することも求められます。
技術の適用事例
カメラ交換レンズ
反射防止効果を持つ新コーティング「メソアモルファスコート」は、直入射光・斜入射光に関わらず、ナノクリスタルコートを凌駕する反射防止効果を発揮し、様々な入射光に起因するゴーストやフレアを大幅に低減します。垂直方向からの入射光に対して高い反射防止効果を発揮する「アルネオコート」との相乗効果で、逆光時にも抜けの良いクリアーな画像が得られます。ナノクリスタルコートの粒子よりも小さいアモルファス構造の粒子が連結した嵩高い構造体が堆積することにより、メソスケール*の粒子間隙が膜全体に形成されます。これによりナノクリスタルコートでは達成できない低屈折率と低散乱の両立を可能にします。
- *メソスケール:ミクロとマクロの間のスケールを指します。ここではここでは数ナノメートルのオーダ。
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この事例に関連する技術
関連技術
コート・表面処理
コートや表面処理により、防錆や防食性などの部品を外部から守ることや、耐摩耗性、摺動性、撥水性、非粘着性など表面上に特性を付加すること、所望な光学特性、電気特性、熱伝導性などを実現することができます。機能性だけでなく美観のためのコート・表面処理もあります。光学特性では反射防止だけでなく、高反射膜ミラーや波長選択フィルター、偏光フィルターなど、光の反射、透過、吸収、干渉などの特性を制御することを可能にします。
光学特性を付加するための光学薄膜について、ニコンでは幅広い光学系に対応するために、設計だけでなく様々な成膜手法が求められます。蒸着やスパッタリングなどの乾式成膜法、スピンコートやディップコートなどの湿式成膜法と、用途に応じた様々な成膜手法を有します。
半導体露光装置における液浸技術では撥水膜やステージまわりの防汚膜、摺動性をよくする膜などが求められます。カメラなどの外観のための成膜も必要となります。
長尺・大型のフレキシブルデバイスの製造方法おいて必要となるフィルム基板への成膜方法として開発されたミストデポジション法は、大気圧で成膜するため真空を用いた乾式成膜と比べて環境負荷が低いこと、生産性が向上が見込めることが特徴であり、今後様々な用途への適用が期待されます。
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