X線源

技術概要

X線は原子の核外部分から発生する電磁波の一種であり、一般に光と呼ばれる可視光の波長領域と比べ、非常に短い波長の領域の電磁波を指します。このような波長の短い領域の電磁波と物質との相互作用は可視光の場合とは異なり、可視光を通さない物質でもX線では透過する物質が多くあります。つまり、可視光では「見る」ことができなかったものがX線を用いることによって「見る」(検出する)ことが可能になります。

X線は、2つの原理によって発生します。1つは、軌道電子の束縛エネルギー以上の電子を照射することで軌道電子を核外に叩き出し、その空席に外殻軌道の電子が遷移する際にエネルギーが電磁波として放出される現象で、この電磁波は特性X線と呼ばれます。もう1つは、大きな運動エネルギーをもった電子が、原子核とのクーロン相互作用により減速されたり進路を曲げられた際に電磁波が発生する現象で、制動放射と呼ばれます。いわゆるX線管では、これらの現象を、電子源から放出される電子を加速させターゲットと呼ばれる金属にぶつけることで引き起こします。X線源として、X線が放出されるターゲット部分のスポットサイズを小さくすることや電子の加速電圧(管電圧)を調節することにより、得られる透過像の精細さやコトントラストを向上させることができます。また重金属に照射する電子の量(管電流)を上げることや、管電圧を上げることは、X線量を上げることにつながります。

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X線源の仕組み

一般に厚みのある被検物を高速で観察するためには、透過率の向上やX線量の増大によるS/Nの向上が有効であり、高精細な像を得るためにはX線のスポットサイズを小さくすることが有効です。ニコンのX線源は450kVという高管電圧により透過率を向上させ、特徴的な冷却機構を採用することによりターゲットの熱損傷を抑制し、高出力・小スポットサイズの両立を実現しています。従来では難しかった高密度な被検物の精密な非破壊検査を実現し、大型鋳物や単結晶合金タービンブレードといった産業用部品の検査に活用されています。

技術の適用事例

X線/CT検査装置

複雑な内部構造を持つ被検物の測定や、内部欠陥検査などの非破壊検査を実現するのが、X線/CT検査装置です。ニコンのテクノロジーが被検物の精密な非破壊検査を可能にし、ものづくりの現場を支えています。
X線/CT検査装置は、被検物を透過したX線をイメージセンサーで受光し、2次元の透過画像を生成。また、被検物を少しずつ回転させて連続撮影し、撮影データをコンピュータで処理することで、3次元CT(Computed Tomography)画像も生成可能です。
こうした画像をもとに、さまざまな方法で被検物を検査できることから、電子部品やプラスチック成型品、鋳物など、さまざまな被検物の非破壊検査に利用され、高品質なものづくりに貢献しています。また、鉱物や化石の調査、考古学など、学術研究の分野においても活躍しています。

X線/CT検査装置
X線撮影の仕組み
タービンブレードのX線検査
エンジン鋳物のX線検査

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光源

光源は光学機器にとって出発点のようなものです。例えば、光計測機器では光源からの光によって対象物を照射し、対象物から反射・散乱する光を検出し、対象物の位置や物性などの情報を得ます。したがって、利用できる光によって計測精度や計測できる対象などが変わるため、光源は重要になります。光は波長や強度だけでなくその時間変化、干渉性、偏光など様々な特性を持っており、所望の特性を有する光を発光・制御することが必要になります。

ニコンでは、深紫外線領域の固体レーザーやX線源などの特殊な波長領域の光源を開発しています。
計測やたんぱく質の結晶加工などに用いられる深紫外線領域の固体レーザーでは、大きな出力とともに安定性および高い繰返し周波数が要求され、赤外線を増幅しつつ波長変換素子にて短波長に効率的に変換する必要があります。

193nm固体レーザー実験風景

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