分光イメージング

技術概要

物質は光の波長によって透過や反射の程度が異なり、これを利用して対象物の物質を特定することができます。分光イメージングでは物質の空間的な分布を把握することができます。分光イメージングは一般に紫外・可視・近赤外の波長帯域の光を用いて、有機物の識別に用いられます。例えば、生体組織の異常検出や食品での品質管理などに用いられます。主に可視光が用いられるため被検物に対する非侵襲性も利点となります。

物を見るには「光」の存在が欠かせません。物体に当たって反射した光を目で捉えることで、その物体を見ています。その光にはさまざまな波長が含まれ、物体が反射した光の波長の違いを私たちは「色」として認識しています。光を波長ごとの成分に分けることを「分光」といいます。図はパプリカの反射光を分光し、波長成分ごとの光の強さの分布をグラフ化したものです。赤い光(長い波長の光)を多く反射し、それ以外の光を吸収していることがわかります。どの波長の光を反射し、どの波長の光を吸収するか(分光反射率特性)は、物体に含まれる物質とその量で決まります。分光技術とは、この物体ごとに異なる分光反射率特性を測定する技術で、さまざまな分野に応用が可能です。

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光の吸収と反射
分光イメージングの事例

食品の製造工程での異物検査では、異物の検出精度が重要となります。食品に含まれる物質は様々であり分光特性から物質の識別をし、かつ画像から得られる物質の形状の情報と合わせて異物を検知する必要があります。

技術の適用事例

食品業界向け異物検査装置

食の安全・安心に対する意識の高まりを背景に、食品製造工程では、異物や夾雑物(きょうざつぶつ)の混入対策が求められています。金属片やプラスチック片などの検出は、金属検査機やX線検査機が効果を上げる一方、木片や毛髪などは、その多くを人の目に頼っています。ニコンは、これらの課題を分光技術とAIを使って解決しました。従来の検査機が苦手な物質をカバーし、お客様の商品や製造環境に最適な異物検査システムを提供します。

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食品業界向け異物検査装置
分光イメージングシステムの構成例

関連技術

内部計測

光を照射し物体の内部からの光応答をとらえられることにより、非破壊で内部の情報を得ることができます。工業用途では、X線CTのような内部計測は、部品ごとの検査だけでなく、3D金属プリンタで造形される一体型の構造物に対しての内部構造検査に有用です。医療や研究用途では、共焦点顕微鏡のように各焦点面の顕微画像を取得することにより実態に近い生体組織での観察の要求に応えることが可能です。

麻酔下のYFP-Hマウス(4週齢)をオープンスカル法でin vivoイメージング。第V層の錐体ニューロン全体と深部の海馬ニューロンを可視化。最大1.4mmの深部の海馬樹状突起の3次元イメージングを実現した。
1300nm対応のGaAsP NDD EPIディテクターユニットおよびCFI75 アポクロマート25XC W 1300対物レンズ(NA 1.10、WD 2.0 mm)を使用して画像取得、励起波長:1040 nm
撮影ご協力:北海道大学電子科学研究所、川上良介先生、日比輝正先生、根本知己先生
※肩書は撮影当時のもの

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