特殊低分散ガラス
技術概要
異常分散ガラスともいわれ、屈折率の波長依存性が特定の波長領域において一般的な光学ガラスと異なるため、一般的な光学ガラスと組み合わせることにより、効果的な色収差補正が可能になります。同様の光学特性をもつ蛍石より、製造および加工において難易度が低く、多くの光学製品にも用いることができます。
一般的な光学ガラスと比べ、熔融した際の粘性が低いため結晶化しやすく、また一部の成分が揮発しやすいため不均質になりやすいです。所望の組成でガラス化させるために、揮発を考慮しながら温度を適切にコントロールし製造する必要がります。
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色収差補正に強力な効果を発揮するため、カメラや双眼鏡、望遠鏡など幅広い製品に用いられます。また、光源に水銀ランプを用いる露光装置でも色収差補正が必要であり、高純度なガラスが必要となります。
技術の適用事例
双眼鏡
可視光はさまざまな波長の光で構成されており、全波長を一点に結像させることが対物レンズの理想です。しかし光はプリズムと同じ作用で曲げられるため、一般的に単レンズでは各波長の焦点距離がそれぞれ異なります。その結果、各波長の光が同じ位置に結像せず、大きな色収差が発生します。
従来のガラス材料を使用したアクロマート対物レンズでは、二つの波長について、その焦点距離を一致させることができます。例えば可視光の両端の波長である赤と青の波長の焦点距離を一致させることで、色収差をある程度押さえられます。ただし、細かく見れば他の波長、例えば緑の波長については焦点距離が異なるため、結果として残存色収差が発生します。この残存色収差を2次スペクトルと呼んでいます。
2次スペクトルは従来のガラス同士の組み合わせでは補正できず、特殊低分散(ED)ガラスのような光学材料が必要になります。EDガラスは、他のガラスと組み合わせることで2次スペクトルの値を非常に小さくできるため、従来のアクロマート対物レンズと比較すると、色収差を飛躍的に低減させることができます。
この事例に関連する技術
関連技術
光学ガラス
光学系に用いられる材料であり、光を自在に操るためにはその材料の品質が重要となります。不純物の除去および均質な光学特性および機械特性にする必要があります。
数多くあるガラス組成のそれぞれに対し最適なプロセスで製造することにより、光学設計が要求する仕様のガラスが得られ、光学性能だけでなく、小型軽量化、低コスト化などを実現します。
ニコンでは様々な光学機器を扱っており、多様な光学特性を持つガラスが必要となります。半導体露光装置などの投影レンズでは紫外線領域の波長の光を透過しかつレーザー耐性がある材料や、カメラレンズでは可視光の領域で低比重や耐衝撃性のある材料が求められます。異なる光学特性をもつ材料を組み合わせて収差を補正するため、様々な組成の開発技術や製造技術が必要となります。
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