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人の可能性を拡げる、
ロボットの目

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宇宙から工場、さらには店頭まで。身近な存在となったロボット。時代はいま、さらなるアップデートを求めています。
Automation(自動化)の道具ではなく、Autonomous(自律)で動く存在へ。
そうなれば、人はもっと創造的な行為に時間を充てられるでしょう。
ロボットの活躍領域を拡げるべく、ニコンが開発に挑んだのが「ロボットビジョン」。
人間で言えば「目」にあたる部分です。独自の技術が生んだ新しい目は、どんな未来を映すでしょうか。

ロボット導入を阻む3つの壁

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より速く、より大量に。かつて産業用ロボットは生産性を高める手段として導入されてきました。
しかし、先進国の多くで人手不足が叫ばれるいま、人手を補うため否応なくロボットを導入せざるを得ないのが実情です。一方で、消費者ニーズの多様化に伴い、製造トレンドは多品種変量生産へ。1つのラインで複数品種を製造できる柔軟な生産システムへの転換が迫られ、もはや単純作業のロボットでは立ち行きません。ロボット導入による自動化は、以前ほど容易ではないのです。
とは言え、高性能・高機能の製品をいざ導入しようとすれば、それだけコストも嵩みます。また、操作や設定のハードルも格段に上がります。
性能・コスト・操作性。3つの壁を乗り越えたロボットだけが、ものづくりの現場に押し寄せる変化の波に対応できるのです。
2030年のありたい姿として「人と機械が共創する社会の中心企業」を掲げるニコン。こうした時代のニーズに新しい解を示すため、チャレンジングなプロジェクトを立ち上げました。

かつてない高精度な“目”を

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目指したのは、3つの壁を乗り越え、製造業を主とする様々なフィールドでロボットが活躍する時代。
その実現に向けてプロジェクトチームが取ったアプローチが、ロボットビジョンでした。

一般に「ロボットビジョン」とは、産業用ロボットに取り付けるビジョンシステムの総称です。
これまでのロボットの多くは「体」のみ。プログラミングされた通りには動けますが、咄嗟の事態には対応できません。これでは人の代わりは務まらないでしょう。まず必要となるのが、対象物や状況を高精度に認識できる「目」です。加えて、目で見た情報を処理する「頭脳」も欠かせません。

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ロボットビジョンは、目に相当する「センサー(カメラ)」と頭脳にあたる「エンジン(制御PC)」で構成され、センサーで得た情報を元にどのように体を動かせば良いかを自ら判断します。ロボットの体に実装すれば、多品種変量生産に求められる臨機応変な作業が可能になるのです。

メーカー各社が性能向上にしのぎを削る中、市場に初めて乗り出したニコン。大きな力となったのが、長年磨き上げてきたコアテクノロジーでした。

独自の技術で、ロボットをアップデート

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プロジェクトチームが生み出したロボットビジョンの特長は、大きく3つ。ニコン独自の技術で、他と一線を画す性能を実現しました。

一つ目は、「圧倒的な高速性」。
そもそも動いているものに対して作業するのは極めて難易度が高く、自動化するには、ロボットとコンベアの動きを完全に同期させる必要があります。しかしこの場合、プログラミング通りにしか動かないため、コンベアの速度や対象物の位置に変化が生じても対応できません。これが、今でも多くの現場で人手頼みとなっている大きな要因です。
ニコンのロボットビジョンでは最大毎秒250枚の静止画撮影により、人間の目の何倍もの速さで対象物を計測。対象物の動きや位置をリアルタイムで認識でき、複雑なプログラミングなしで、柔軟な作業を可能にします。

二つ目は、「高い認識力」です。
多くのロボットビジョンの「目」は、対象物を立体的に捉える3Dカメラのみ。これに対してプロジェクトチームは、3Dカメラに加え、高速な認識を可能とする2Dカメラを組み合わせたハイブリッド構造を採用。高い認識力は、作業の精度だけでなく、速さももたらしました。対象物を認識してから動き出すまでの時間は、わずか2秒※1です。
また、従来のロボットビジョンは「据付型」が主流でした。櫓に設置したビジョンで真上から対象物を捉え、ロボットに動作指示を送るという手法です。カメラの視野が固定されているため、対象物が視野から外れると認識できなくなり、取りこぼしが多く発生していました。
ニコンが採用した「ハンドビジョン型」は、その名の通り「手」と「目」が一体化。人で喩えると、手の甲に目が付いているイメージです。対象物が視野から外れた場合も、アームを動かし別の角度から覗き込むことができます。

三つ目は、「使い勝手の良さ」です。
従来のロボットビジョンはソフトウェア操作が複雑で、専門知識が必要でした。現場にとって高い導入ハードルとなっていたのです。この課題に対し、プロジェクトチームはシンプルで直感的なインターフェースの採用や各種設定の自動化を実現しました。ロボットが対象物のどこを掴むかも容易に設定でき、アームが周囲にぶつからないルートは自動算出。使い勝手が格段に向上し、簡単な動作であれば、わずか20分程で設定を完了できます。
また、設置や移動が大がかりな据付型に対し、ハンドビジョン型はアームの先端に取り付けるだけで設置可能。既存の設備をそのまま活用できるため、導入の時間とコストを大幅に抑えられます。

これらの特長が大きく活きるのが、次の2つのアプリケーションです。
「ビジョントラッキング」では、高速性能により、流れてくる対象物の位置や速さが変化しても、ロボットやコンベアの動きを停止することなく作業を行えます。
「バラ積みピッキング」では、高い認識力により、箱の中にランダムに積まれた対象物の状態を正確に捉え、タクトタイム※2の短縮に寄与します。

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決して平坦な道のりではなかったロボットビジョンの開発。これを支えたのは、ニコンのコアテクノロジーでした。
振動の多い工場ではアームの先に細かなブレが生じます。半導体製造を支える最先端の半導体露光装置などで培った精密技術が、このブレの修正に寄与しています。もちろん「目」にあたる部分には、映像機器などで培った光利用技術が応用されています。

技術だけではありません。生産現場を熟知することも、ロボットビジョンの開発に欠かせない重要な要素でした。プロジェクトチームが納得するものであることはもちろんですが、それ以前に、真に求められるものでなくては意味がありません。現場に足を運び、お客さまのリアルな声を拾い上げ、それを試作機に落とし込む。そして、実際にテストユーザーに使ってもらうという工程を何度も繰り返し、性能・コスト・操作性の壁を乗り越えていったのです。

  • ※1当社環境でのテストにおいて
  • ※2製品1個あたりに掛かる製造時間

ロボットビジョンが見つめる未来

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ものづくりの現場からの大きな期待を背負い、ついに発売したロボットビジョン。
直近では、自動車やデバイス、スマホの組み立てでの活躍を見込まれています。そして、ゆくゆくは、今では想像もつかないようなフィールドへもロボットを導いてくれることでしょう。
ニコンはロボットビジョンを通じて人手不足の解消だけでなく、人がより創造性を発揮できる社会を切り拓いていきます。

次世代プロジェクト本部
脇本 健太

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私は元々ロボットメーカーに在籍しており、今回のロボットビジョンの開発をきっかけにニコンに招かれました。100年余り培われてきたニコンの技術と私のロボットに関する知見を組み合わせることで、ロボットの活躍領域をさらに拡げられると感じました。
ロボットビジョンは、ロボット単体では困難な作業を補う役割。ロボットが高性能化・高機能化を求められれば求められるだけ、ロボットビジョンの役割も重要になってきます。常に時代のニーズをキャッチアップしながら、絶えず新しい価値を提供していきたいです。
これからはロボットビジョンの改良はもちろん、ロボットを含む全体の知能化やヒューマンマシンインターフェースにもフォーカスして、ロボティクスの進化に貢献していきます。

次世代プロジェクト本部
角田 大河

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営業職として、お客さまと接する機会が多いのですが、なかでも、最近は特に「操作性」を重視される方が多いように思います。従来製品のほとんどは、セットアップに2時間程要していました。対してニコンのロボットビジョンは20分程度。私はニコンに入社してまだ間もなく、これまでロボットに全く触れたことがありませんでした。そんな自分でもわかりやすく、使いやすい。早くセットアップできる分、その時間を他の作業に充てられるというメリットもあります。自分の体感をお客さまに実感を持って伝え、この製品を広めていきたいです。そしてロボットビジョンが、あらゆるフィールドで求められる存在になることを願っています。

  • 所属、仕事内容は取材当時のものです。

公開日:2024年10月31日

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