映像から拡がる、
推し活の未来
近年、Z世代を中心に世界中で広がりを見せている「推し活」。
アイドルやアニメキャラクターなど、推し活の対象は人によってさまざま。スポーツも例外ではありません。
ファンが試合会場に足を運び、選手の素顔や試合の決定的瞬間を写真に撮って盛り上がる。
いま、そのような動きが急速に活性化しています。
映像の力で、推し活の可能性をさらに拡げられないか。
ニコンは、推しを撮る人と見る人をつなぐ写真共有サービス「フォトサポ」の開発に挑戦しました。
時間と空間を超えて感動をシェア
デジタル化の進展によって、いつでもどこでも情報を共有できる時代。一方で、デジタルでは代替できない普遍的価値として、リアルな体験があらためて見直されています。この2つが相互に作用することで感動や共感を高めるとあって、「リアルな体験」の「デジタルでの共有」がいまさまざまなフィールドで広がっています。
それは、スポーツの分野へも。
しかし、エンタメが多様化し、「コスパ」に加えて「タイパ」も意識される昨今。ファンを獲得するのは容易いことではありません。ファンのニーズにいかに応えられるかがその鍵を握ります。
声を上げて応援したい、静かにじっくり観戦したい…。スポーツ観戦にもさまざまなカタチがあります。そのなかで、推しの選手を撮影したい、そしてその写真を通して体験や感動を共有したいという声が高まってきています。
「時間・空間を超えて人がつながる社会を映像制作の面から支える」を掲げるニコンは、推し活において「推し」の写真がファンコミュニティのひとつの結節点になっていることに着目。
まずは、ニコンと関わりが深いスポーツの分野において、映像の力で推し活の可能性を拡げることをミッションに、プロジェクトチームを立ち上げました。
スポーツを“観る”から“共創する”へ
ニコンはこれまで、長年にわたりスポーツ界を支えてきました。さまざまな大会のスポンサーシップ活動だけでなく、メジャーな大会では会期中、世界中から集まるメディアやフォトグラファーのために機材のメンテナンスブースを開設しています。
これらの多くは、いわゆる“プロフェッショナル”のためのサービス/サポートです。では、一般のファンのために、ニコンができることはなにか。
たどり着いたのが、ファンを「受け手側」から「創り手側」にするというチャレンジです。ひと昔前までは、選手を撮影することは制限されていました。しかし、スマホが人々の生活に欠かせない存在となったいま、多くのジャンルで撮影の門戸が開放されつつあります。推しを撮影し、その写真を通じて仲間と感動を共有できれば、推し活はさらに楽しいものになるに違いありません。
スポーツを“観る”から“共創する”へ。そう仮説を設定し、プロジェクトが始動しました。
2022年。プロジェクトチームがリサーチも兼ね、複数のプロスポーツリーグ・チームに話を持ち掛けたなか、最初に呼応してくれたのがサッカー・Jリーグの川崎フロンターレでした。
川崎フロンターレは、ファンや地域との交流を第一に考えるクラブチームです。ファン施策を意欲的に進めた結果、ファンクラブの会員数は年々増え続けています。
日頃から新しいファンサービスを模索している川崎フロンターレ。そして、ファンを創り手側にする試みに挑戦していたニコン。ファン起点という想いは同じです。意気投合した両者は、初めての出会いから月日を空けず、早速協業を進めることになりました。
すべての開発は“ファン視点”で
プロジェクトは社内のメンバー8名を中心に、ときに社外専門家の意見も採り入れながら進められましたが、もっとも意識したのがユーザーオリエンテッド。つまり徹底したファン視点です。
どれだけ新しい技術でも、どれだけ目新しい機能でも、それがファンにとって有意義なものでなければ意味はありません。必ずしも「最先端=正解」ではないのです。
逆に言えば、こなれた技術であっても、それを組み合わせることで、ファンが待ち望んでいた機能やサービスを充分に実現でき、そして迅速に提供できるなら、そうすべきであるとプロジェクトチームは判断しました。
ファンの期待に応えるために、プロジェクトでは、仕様や設計をがちがちに固めて開発に入るのではなく、実装とテストを高速で回す“アジャイル開発”を採用。実際にファンに試用してもらいリアルな意見をもらったり、クラブチームからの要望を受けたりと、さまざまな人の力を借りながら開発を進めていきました。フィードバックを着実に反映しつつ、スピード感をもってブラッシュアップを繰り返す日々。そんななかでも、ユーザーの個人情報やセキュリティ対策など、細やかな部分にも気を配りながら進行していきました。
そして、ニコンが映像事業などで培ってきた技術やノウハウと、ファンの想いから生まれたのが、ウェブ上の写真共有サービス「フォトサポ」です。
ポイントは3つ。
1つ目は、推しの選手の写真を簡単に検索できる機能。AIが選手全員の顔を学習し、選手名を検索すれば、膨大な枚数の中からその選手を映したものだけが絞り込まれてレコメンド表示される仕組みです。自動識別の精度を高めるため、選手一人ひとりのあらゆる角度の、あらゆる表情を捉えた写真、計数千枚ものデータをAIに学習させました。
2つ目は、投稿された写真に「コメント」や「いいね」を残せる機能です。SNSでは、ごく当たり前の機能ですが、日頃使い慣れたものこそファン同士のつながりが活性化すると考え、敢えて手を加えることなく搭載しました。
3つ目が、撮影位置の共有機能です。気になった推しの写真を選択すると、どのシート(座席)から撮影されたかわかる機能。同じ角度から撮影したい、応援したい、という声に応えるものです。スマホなどに搭載されているGPS機能でも同様のことが行えますが、座標はわかっても座席まではわかりません。そこで、スタジアムごとに席種をリスト化し、投稿する際に選択してもらう、という敢えてアナログな手法を採る判断をしました。
フォトサポパートナー
いま「フォトサポ」は、Jリーグでは川崎フロンターレのほか、セレッソ大阪でも運用されています。さらに、スーパーフォーミュラといったモータースポーツ界でも運用が始まりました。
映像の力は、ニコンは、推し活やファンコミュニティの可能性をどこまで膨らませることができるでしょうか。ニコンは、川崎フロンターレと“Nikonエキサイトマッチ”も開催。一般のファンに、ピッチサイドでの試合撮影の場を提供したり、プロフェッショナルフォトグラファーによるカメラ講習会も実施しています。また、「フォトサポ」を起点としたファンイベントの開催、コミュニティ作りも進めています。
「フォトサポ」の運用が進めば、推し活の可能性はさらに広がり、人々の日常をより豊かに彩ることでしょう。
川崎フロンターレ 営業統括部 パートナーリレーション部
遠藤 輝来
川崎フロンターレでは、ファンや地域の方との良好な関係構築のために、日々さまざまなイベントを企画しています。そのなかで、フォトサポを通じてファンだけのイベントを行ったことがあるのですが、想像以上にファン同士のつながりが生まれ、早速第2回の開催を望む声が上がり、私にとっても新たな発見がありました。
このように、川崎フロンターレで上手くいったことは横展開して、他のチームやスポーツにも広がっていけば私たちとしても嬉しいです。ぜひ、これをモデルケースにしてもらえればと思います。
映像×推し活のこれから
ニコン映像ソリューション推進室
佐々木 哲也
ファンの方にどうすれば歓んでもらえるか。その想いが「フォトサポ」開発の原点であり、いまも常に考え続けています。川崎フロンターレさんと共同でイベントを実施させていただくことも多いのですが、そこで得られるファンのリアルな感想は、とても貴重です。その声に真摯に向き合い、一つひとつ丁寧に拾い上げていくことが、このサービスの発展につながると思っています。
「フォトサポ」はファンに広く開放されるプラットフォームでありたいと思っています。ニコンファンであってもなくても、カメラで撮ってもスマホで撮っても良いと思っています。まずは「フォトサポ」を知ってもらい、多くの方に使ってもらう。そこからです。それをきっかけに「撮影が楽しい」「スポーツが好き」と思ってくださる方が一人でも増えれば嬉しいです。私たちのチャレンジは、これからも続きます。
ニコン映像ソリューション推進室
安井 達也
最近よく、「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」という言葉を耳にするようになりましたね。今回のプロジェクトがまさにそうなのですが、企業あるいはスポーツの運営団体が主体となって発信する情報よりも、ファン主体の情報の方がリアル感があって共感を呼びやすいんです。私自身もそれを身をもって感じることができ、いまは「フォトサポ」をさらに進化させたいと意気込んでいます。
ファン同士の発信・交流の場を作ることにより、それが他のファンの方に広がったり、新規のファンの方を連れてきたりすることにつながるはずです。ニコンの「フォトサポ」が、スポーツチームの成長、ひいてはスポーツ界全体の活性化を促し、さらにはスポーツ以外の分野でも推し活の可能性を拡げていける存在になることを心から願っています。
- ※所属、仕事内容は取材当時のものです。
公開日:2024年7月5日
サービスの詳細情報をご紹介します。
- ※2024年7月現在、フォトサポのサービスは国内のみとなります。
ストーリーズ
- 映像から拡がる、推し活の未来
- DXで畜産業界の働き方に貢献
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Z 9静止画編 - 報道の最前線、その先へ
パート2 - 報道の最前線、その先へ
パート1 - 光で、ものづくりを
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