FPDはどんな夢を
見せるのか
ディスプレイの進化と共に歩み続けるニコン
かつて想い描かれた未来を、次々に実現してきた薄く平らなディスプレイである
「フラットパネルディスプレイ(FPD)」。
ニコンは、大型化や高精細化など、その進化をパネルメーカーと共に支えています。
さまざまな近未来で描かれてきたFPD
国際救助隊本部が隊員との連絡に使っていた額縁型の映像ディスプレイ、ウルトラ警備隊がテレビ電話していたビデオシーバー、反乱軍のお姫さまが救援を請うホログラムを投影していたロボット、全天周囲モニターで囲まれ宇宙に浮かぶ感覚でモビルスーツを操縦できるコックピット……。
かつてのSF小説や映画、アニメの中で、ディスプレイは未来を象徴するアイテムとして描かれていました。
「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」―SFの父と呼ばれるフランス人作家ジュール・ヴェルヌ が信じたように、壁に掛けられるテレビを目指した技術者たちの努力の成果は、フラットパネルディスプレイ(FPD)となって、あっという間にCRT(ブラウン管)にとって代わり、テレビやスマートフォン、パソコンのモニターなど、今や毎日の暮らしに欠かせないアイテムとして浸透しています。
液晶と有機ELに続く次世代FPDは何か
さまざまな革新的技術の発見が実現したFPD。そこでは、実に不思議な性質を持つ物質が活躍しています。
その一つが、液体と固体両方の性質を備えた物質「液晶」。それ自体は発光しませんが、電圧をかけると向きが変わるため光学的なシャッターとして利用でき、透過光を制御することで映像を表示しています。輝度とコントラストに優れています。
一方、電流を流すと発光する有機物質を利用しているのが有機ELディスプレイ。自ら光るためバックライトなどの光源がいらず、より薄くでき、フレキシブルに曲げられるのも特長です。
ディスプレイメーカーなどでは、新たな発光原理に基づく次世代FPDの研究も進められています。
その一つが、量子ドットディスプレイ。ナノサイズ※の半導体結晶物質を利用し、より鮮明な色と低消費電力を実現する液晶ディスプレイのバックライトとして有望視されています。また、赤・緑・青色の各LEDを微小化し、画素として敷き詰めたマイクロLEDは、それ自体が発光するため液晶の弱点であったムラがなくなり、高コントラストと高視野角を実現。液晶より低消費電力になることも期待されています。
- ※ナノメートルは10億分の1メートル。 光の波長や原子・分子の構造のスケールを表すのに利用される単位です。
いま、ここにあるFPDの未来
FPDを製造するための「FPD露光装置」を提供してきたニコンは、大型ガラスプレートを効率よく露光するため「マルチレンズ・システム」など、つねに新たな技術を投入し、時代のニーズに応えつづけてきました。
大型化とともに、4K、8Kと高精細化も進んでいくFPD。映像はよりリアルになり、手術や遠隔医療に使う医療用ディスプレイとしての需要もますます高まっていくことでしょう。また、四角い形状にとらわれないディスプレイが実用化されれば、自動車のインスツルメントパネルやセンターディスプレイに応用できるとともに、これまでとはまったく違うユニークなデザインのスマートデバイスが近い将来登場するかもしれません。
FPDはこれからも、エンターテインメント、医療、自動車、教育など、暮らしやビジネスのさまざまな分野で多彩な未来を映し出していくことでしょう。ニコンは、その可能性をFPD露光装置の革新を通じて支え、楽しく便利で豊かな毎日に貢献していきます。
技術でお客さまの声に応え続け、
世界のトップランナーに
FPD装置事業部長
戸口 学
FPD露光装置の大きさがどれぐらいかご存じですか? たとえば4K、8Kテレビや高精細タブレットのFPD製造に利用される「FX-86S2」は、幅14.6m×奥行き10.7m×高さ5.1m。装置というより、まるで1つの「工場」といっていいほどの大きさです。露光するガラスプレート自体が2200 mm×2500 mmと大きく、それを露光・搬送、さらには装置自体をメンテナンスするためのスペースなどが必要なためです。そのためお客さまの工場に納入するときは、ニコンの工場や協力会社の工場で個々のユニットを製造し、お客さまの工場でそれらをドッキングし全体を完成させます。そのときに輸送に使用するトレーラーは数十台にもなります。
FPD露光装置の役割は、微細な薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor=TFT)の回路パターンをガラスプレート上に焼き付ける(パターニングする)ことにあります。TFTは液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの画素一つひとつに付いていて、それらを制御することで映像を表示しています。
ニコンのFPD露光装置の特徴は、半導体製造装置で培った技術をもとに露光方法を進化させ、FPDの高解像度化・大型化を高い生産性で支えてきたことにあります。大型化に対応する露光方式としては、複数のレンズを1本の巨大レンズのように精密に制御して露光するニコン独自の「マルチレンズ・システム」を開発。マルチレンズシステムだからこそ細かく制御でき、大きなガラスプレートに効率よくパターニングすることができます。また、熱プロセスによって変形したガラスプレートに対して、一つひとつのレンズで補正できるので、高い重ね合わせ精度を実現できるのも特徴です。
ニコンはマルチレンズ・システムに象徴される、たゆみない技術開発でFPD露光装置のトップシェアを獲得しています。これから成長が期待される様々な次世代FPDへの対応も進め、今後もお客さまの声に応える商品開発でFPD露光装置のトップランナーとして走り続けます。
公開日:2017年11月30日
更新日:2022年04月11日
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