iPS創薬に役立つソリューション
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iPS細胞は再生医療だけでなく、創薬研究での活用も期待されています。ニコンは神経疾患の「iPS創薬」の研究開発に役立つソリューションの提供をはじめています。
iPS細胞を利用した新薬の開発に期待が高まる
医療が進歩を続けている影で、「薬の効果が低い」あるいは「薬そのものが存在しない」といった病気があるのも事実です。たとえばパーキンソン病やアルツハイマー病といった治療法が確立されていない神経疾患は、治療満足度(医師が治療効果を感じる度合)も薬剤貢献度(薬が治療に貢献していると感じる度合)も低く、多くの患者さんやその家族が苦しんでおり、新たな薬の登場が待ち望まれています。
そうした状況のなかで、いま薬の開発に「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」が使われはじめているのをご存知でしょうか。患者さんの体の細胞からiPS細胞をつくり、それを治療したい体の部位の細胞へ変化(分化誘導といいます)させることで、「病気の状態をもった細胞」をつくることができます。このような「病気を再現した細胞」へ薬の候補となる物質を投与することで、薬の効果や安全性を調べることが可能となりました。こうした方法での薬の開発は「iPS創薬」とよばれます。
従来の創薬では、こうした患者さんの状態を模した評価を行うことができなかったため、膨大な時間を掛けて発見した薬の候補物質が、人への試験(治験といいます)の段階で危険性などが明らかとなり、薬の開発が行き詰まることが頻繁にありました。一方、iPS創薬では、患者さんの細胞を対象にしながらも、患者さんの体には影響をあたえずに、たくさんの実験ができるという、大きなメリットがあります。実験が効率的になり、より新薬の開発が進むことが期待されているのです。
「治療満足度の低い神経疾患に新しい薬を」という思い
ニコンには創業当初から長きにわたって顕微鏡をつくってきた歴史と、そこで培ってきた高い技術、研究者との深いつながりがあります。そうした技術や研究者との関係性を活かして、iPS細胞を使った神経系疾患治療の開発に役立つソリューションの展開をはじめ、製薬会社などの研究開発をサポートしています。
神経疾患は、脳の神経に原因があることが多く、脳で考える、覚えるといったことがうまくできなくなったり、脳からの指令がうまく伝達できず体が不自由になるなど、患者さん本人のQuality of life(生活の質)に大きく影響をあたえます。また、患者さんを支える家族の負担も大きいことから、ターゲットをこの神経疾患に決め、新薬開発の研究支援という形で貢献したいと考えました。
効率よく正確性の高い実験を導くソリューション
製薬会社などで行われる実験では、患者さん由来のiPS細胞を神経細胞に変えて培養し、薬の候補となる物質を投与したらどうなるかを観察して、有効性や安全性を確認します。ニコンの創薬支援ソリューションでは、「培養」「観察」「画像解析」の技術を組み合わせることで、より効率的に実験を進めるお手伝いをします。また、これらをトータルでコンサルティングすることで、より正確に神経細胞に対する候補物質の評価をサポートします。
培養
米国のハーバード大学との共同研究で、神経細胞の最適な培養条件などを見出し、高い培養技術を構築しました。またハーバード大学が、多くの患者さんの協力を得ることで作成した「各病気を再現したiPS細胞」を用いて、さまざまな神経細胞に適した培養系を確立することにも成功しました。
観察
ウェルと呼ばれる仕切りのあるケースに入った、動く神経細胞の1個ずつを識別しながら、変化する様子を撮影。培養しながらリアルタイムで観察することができます。神経細胞の大きさはマイクロメートル・レベルと微小。ニコンが培ってきた顕微鏡の技術が発揮されています。
細胞を培養しながら顕微鏡観察できる細胞培養観察装置「BioStation CT」
画像解析
1個ずつの神経細胞について突起の数、大きさ、移動した量などを撮像した画像で解析し、薬の候補となる物質を添加することで、元気になったもの、物質の影響で死んだもの、寿命で自然に死んだものなどを判断できる、より高精度に候補物質の影響を評価できる解析システムを構築しました。
画像解析した運動神経細胞。細胞体や神経突起を認識して表示している
コンサルティング
薬の開発に携わる研究者・技術者が、これらの高度な技術をいかんなく活用できるよう、実験装置の最適な使い方をガイドしたり、候補物質の正確な評価のサポートを提供する、トータルなコンサルティングを行います。
Outlook多くの人のQuality of life向上のために
創薬支援ソリューションは、大学の研究者などとの共同研究によって実現しました。今後もニコンならではのコア技術を活かしながら、積極的に外部の技術にもアプローチすることで、健康や医療という新たな領域での事業を展開していきます。
ニコンでは、このソリューションを通して、iPS創薬の活発な研究開発と薬の開発に役立ちたいと考えており、将来的には、神経疾患以外の創薬にも活用していただけるようソリューションを拡大していきます。
これからも、多くの人のQuality of lifeの向上のために、先端医療の発展に貢献していきます。
関連するSDGs
持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)
国際社会が持続可能な発展のために2030年までに達成すべき目標で、国連総会が2015年に採択した。貧困、飢餓、教育、気候変動に関してなど、合計17の目標からなる。