環境
気候変動等は経営に対するリスクである一方で、コア技術を活かし脱炭素化や資源循環に貢献していく事業機会でもあると考えています。ニコンは、ニコン環境長期ビジョンにおいて「脱炭素社会の実現」「資源循環型社会の構築」「健康で安全な社会の実現」を掲げ、環境配慮と事業成長を両立しながら、サステナブルな社会の構築をめざしています。
重要と考える理由
気候変動の影響がより顕著になり、それに伴う社会や経済の損失や損害が深刻さを増す中、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、化石燃料からの「脱却」および2030年までに再生可能エネルギー容量を3倍に、省エネ改善率を2倍にするという、エネルギーに関する合意がなされました。また、世界全体の気候変動対策を評価する「グローバル・ストックテイク」の成果文書では、1.5℃目標達成のために緊急に行動をとる必要があることが改めて確認され、すべての温室効果ガスおよび産業・運輸・家庭などのすべてのセクターを対象とした排出削減、分野別の貢献が盛り込まれました。これらの結果を受け、企業には環境長期目標の実現に向けた気候戦略、それに基づく環境マネジメントの構築と着実な取り組みがますます求められるようになります。
同時に、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄型の線形経済から、資源を循環させる「サーキュラーエコノミー(循環経済)」への移行が求められています。また、製品に含まれる化学物質においては、法規制対象となる物質および適用地域が着実に拡大しており、企業は製品のライフサイクル全体で及ぼす環境負荷を低減させていかなければなりません。
さらに、2030年までに生物多様性の損失を止め、自然を回復の軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の実現をめざし、企業にはTNFD*のフレームワークに基づく情報開示や自然関連リスク・機会の評価、そして取り組みのさらなる強化が求められています。
- *TNFD:Taskforce on Nature-related Financial Disclosuresの略。「自然関連財務情報開示タスクフォース」と訳され、企業・団体が自身の経済活動による自然環境や生物多様性への影響を評価し、情報開示する枠組みの構築をめざしている。
コミットメント
ニコンは、ニコン環境長期ビジョンにおいて「脱炭素社会の実現」「資源循環型社会の構築」「健康で安全な社会の実現」をめざしており、2030年度までの具体的な目標としてニコン環境中期目標を定めています。
脱炭素社会の実現に向けては、2023年度に、2050年度までのネットゼロ目標についてScience Based Targets(SBT)イニシアティブより認定を受けました。また、再生可能エネルギー(再エネ)の導入については、2050年度から20年前倒し、2030年度に100%をめざすこととしました。2023年度には、主力拠点であるNikon Thailand Co., Ltd.と栃木ニコン、栃木ニコンプレシジョンの3社で再エネ100%に切り替え、ニコングローバルでは、69.3%となりました。今後も目標の達成に向け、着実な導入に努めていきます。
気候変動等は経営に対するリスクである一方で、コア技術を活かし脱炭素化や資源循環に貢献していく事業機会でもあると考えています。ニコンは、中期経営計画でもサステナビリティ戦略を柱に据えており、環境配慮と事業成長を両立しつつ、サステナブルな社会の構築に貢献してまいります。
環境戦略
ニコングループは、持続可能な社会への貢献と自社の持続的成長をめざす「サステナビリティ方針」と、環境に関する具体的な方針として「ニコン環境活動方針」を定めています。これらの方針のもと、環境リスクや規制に積極的に対応していくため、2050年度を見据えた「ニコン環境長期ビジョン」を策定しています。このビジョンでは、世界の状況や、限りある資源を使用して製品を製造・販売しているというニコンの事業の性質から、特に重要と考えられる3つを柱として設定しています。
これらの柱は、マテリアリティ(重点課題)および2030年度をターゲット年とした「ニコン環境中期目標」と連動しています。単年目標としては「環境アクションプラン」を定め、グループ全体へと展開しています。事業活動における環境との関わりを明確にし、環境負荷や環境リスクの大きさを的確に把握することで、目標や計画には優先順位を付けています。
また実績については、自己評価を環境部会にて審議・承認するとともに、抽出した課題をもとに、次年度以降の活動を見直しています。
ニコン環境長期ビジョン(ターゲット時期:2050年度)
ニコングループは、「脱炭素社会の実現」「資源循環型社会の実現」「健康で安全な社会の実現」をニコン環境長期ビジョンとして位置付け、サステナブルな社会の構築に貢献していきます。
環境負荷低減につながる新規事業の創出やイノベーションに取り組んでいきます。
- *バリューチェーン全体における温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)を90%削減し、残余排出量は国際的に認められる手段によって中和する。
ニコンの環境目標関係図
マテリアリティ
3. 脱炭素化の推進
- ありたい姿
- 2050年度までにバリューチェーン全体のネットゼロを実現
- 戦略
- Scope1、2、3の削減と再生可能エネルギーの導入加速
- 指標/目標(達成年度)
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- Scope 1、2削減率/2022年度比 57%(2030年度)
- Scope 3の削減率/2022年度比 25%(2030年度)
- 再生可能エネルギー導入率/100%(2030年度)
4. 資源循環の推進
- ありたい姿
- バリューチェーン全体における資源消費の最小化と資源循環利用の最大化
- 戦略
- 資源消費量の削減と廃棄物等の削減
- 指標/目標(達成年度)
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- 製品へのリサイクル材使用率/5%以上(2030年度)
- 廃棄物総排出量削減率/2018年度比 10%以上(2030年度)
- 淡水消費量削減率/2018年度比 5%(2030年度)
5. 汚染防止と生態系への配慮
- ありたい姿
- バリューチェーンにおける人の健康と生態系への負の影響ゼロ
- 戦略
- 化学物質の適切な使用と生態系への影響・依存の低減
- 指標/目標(達成年度)
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- 製品における有害化学物質の含有/含有ゼロ(2030年度)
- 製造プロセスにおける有害化学物質の使用/使用ゼロ(2030年度)
- FSC 認証紙または再生紙の比率(カタログ、取扱説明書、梱包箱)/100%(2030年度)
ピックアップ
ネットゼロに向けて
再生可能エネルギーの導入を加速
ニコングループは2050年度までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするネットゼロ*1を目指しています。2024年3月、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー(再エネ)で調達する、という目標の達成年度を2050年度から2030年度へ20年前倒しすることとしました。ニコングループからの温室効果ガス排出の約80%は電力使用による排出なので、再エネの導入はとても重要な施策です。
目標の達成年度を前倒しすることで、再エネ導入の取り組みを加速させていきます。またニコングループ内における再エネ導入の拡大だけでなく、加入しているRE100*2を通じて政府などに再エネを導入しやすい社会システムの構築を働きかけることにより、社会における再エネの普及にさらに貢献していきたいと考えています。
- *1ネットゼロ:バリューチェーン全体における温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)を90%削減し、残余排出量は国際的に認められる手段によって中和こと。
- *2RE100:国際的な環境NGOであるCDPと気候変動に対する活動に注力する非営利組織The Climate Groupが、パートナーシップのもと運営し、世界の企業が参加する国際的イニシアチブ。
ニコン新本社、
環境配慮型オフィスビルを実現
2024年7月29日より稼働するニコン新本社では、日射遮蔽効果に優れた外装デザインを採用することで必要な空調用エネルギーを抑制するとともに、自然光の室内への導入や自然換気を促す機能も有した構造を採用しています。オフィスの稼働状況に応じた可変風量システムの導入などを合わせ、建物全体での大幅な省エネを実現し、「ZEB Ready*1」認証と、建築物省エネルギー性能表示制度「BELS*2」の最高ランクである6つ星を取得しました。エネルギー使用量の削減に加え、太陽光発電による創エネを組み合わせ、環境に配慮したオフィスビルを実現しました。
- *1ZEB Ready:Net Zero Energy Building Readyの略。快適な室内環境を実現しながら、従来の建物で必要なエネルギーと比較し、省エネによって50%以上のエネルギー消費量の削減を実現している建物。
- *2BELS:Building-Housing Energy-efficiency Labeling Systemの略。建築物の省エネルギー性能を第三者機関が評価、認定する制度で、星の数で6段階評価が行われる。
製品3Rの取り組み
「半導体露光装置のリユース」
ニコングループは、お客様が使用しなくなったニコン製の半導体露光装置を引き取り、国内外の新たなお客様向けに再生・部品交換・調整・据え付けを行うサービスを事業化しています。この事業は、ニコン製品のリユースを自社グループ内で自らが実践している事例で、2023年度までの累積販売台数は464台に達しています。