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鈴木 涼子
Interview
化学の力で
社会や暮らしに貢献していく。
私にとってその最適な場所がニコン。
鈴木 涼子
Ryoko Suzuki
先進技術開発本部 材料・要素技術研究所 第一研究課
2014年入社
応用化学専攻修了
現在の仕事
材料・要素技術開発
Profile
Ryoko Suzuki
入社動機
学生時代の研究テーマは無機と有機を組み合わせたハイブリッド材料。研究に没頭しているうちに、自分は有機材料よりも無機材料に興味があることに気づきました。この無機材料の研究開発に取り組めることに加えて、面接で会った先輩研究者と有意義で楽しいディスカッションができたことも入社の決め手でした。
異動歴 ※名称は当時のものです
2014年4月:先進技術開発本部 材料・要素技術研究所 第一研究課
One Day
08:20:出社、実験や打合せなどスケジュールの確認
10:00:実験スタート
11:00:実験室で、待ち時間にパソコンで事務作業など
12:00:昼食
13:00:午前からの実験を継続。その合間に資料作成、データ処理など
19:00:デスクに戻り、明日のスケジュールの確認
19:30:退社
入社3年目の実験がきっかけで生まれた
NIKKORレンズ史上最高の反射防止性能。
取り組んでいる研究開発テーマを教えてください。
入社してからずっと無機ナノ材料の研究開発をしています。この無機ナノ材料は、その名のとおりナノメートルオーダーのきわめて微細な構造をもつ無機材料のことです。私が携わった応用技術の一つとして「メソアモルファスコート」があげられます。これはカメラレンズで実用化されている反射防止コーティングです。アモルファス構造をもつ微粒子が繋がった嵩高い構造体を積み重ねることによって、メソ孔に分類される大きさの、空気を含んだ粒子間隙を形成しています。構造体の嵩高さを調整することによってコーティングに最適な量の空気を含ませることに成功し、反射防止膜として最適な屈折率を実現しました。これにより、NIKKORレンズ史上最高の反射防止性能を達成することができました。
その画期的な発想はどのように生まれてきたのですか。
始まりは、ある材料との幸運な出会いでした。入社3年目、無機薄膜の作製に関する先輩の研究テーマを手伝っていました。その中で、何となく作製後にしばらく放っておいた材料を成膜して分析してみると、膜は想定よりはるかに低い屈折率でありながら、その他の性能も優れていることに気づいたのです。これはひょっとしてすごい膜かも……。それからさらに性能や再現性を向上させるために実験を重ねました。私が入社する前から研究所内では新しい光学薄膜を開発するテーマが続けられており、「それをブレークスルーするのはまさにこの材料だ!」と閃いた私は上司に提案を行いました。そして、提案が研究所やその他の部署で認められ、開発プロジェクトが加速していったのです。この「メソアモルファスコート」の開発過程では、研究ばかりでなく開発、製造まで、ものづくりのプロセスを近くで見ることができました。性能や機能の追求ばかりでなく、製造のしやすさやコストなどを考慮する大切さも学びました。ニコンの研究者として何を生み出していくべきかを深く考えるきっかけになったと思います。
最先端の研究を支える、
自由でオープンな環境。
どのようなところにやりがいを感じていますか。
研究開発テーマの自由度が高く、意欲さえあれば自分のやりたいテーマにチャレンジできるところですね。「メソアモルファスコート」がまさによい例だと思います。入社3年目の若手の提案から、これほどの大きなプロジェクトが動き出したのですから。もちろんそのためには、ユニークな着想とそれを論理的に説明できる力が必要であることは言うまでもありません。テーマの提案ばかりでなく、研究計画や実験の立案などでも自分で決められる部分が多く、モチベーションアップにつながっています。また、社外との共同研究に積極的なところもニコンの研究の面白さのひとつだと思います。私はニコン入社後に2つの大学院で博士号を取得しています。1つ目の学位は、週末に自主的に母校に通って取得しました。自主的な内容であったこの研究は、やがてニコンとの共同研究という形になり現在も続いています。もう1つは共同研究先の大学院で取得しました。入社4年目からの一時期、1か月に1週間ほどのペースで大学院に通いました。研究成果はプレスリリースしていただき、ニコンの技術アピールができました。
地球環境に貢献する
無機ナノ材料の開発に挑む。
今後チャレンジしたいテーマはありますか。
現在、地球環境に関わる無機ナノ材料の研究開発を進めています。おそらく、ニコンにとって未知の領域ではないでしょうか。そう言うと突拍子もないテーマのように思うかもしれませんが、きちんとバックボーンがあります。「メソアモルファスコート」の低屈折率薄膜の応用展開を模索するなかで、面白そうな無機ナノ材料を見つけました。吸着性などにおいてかつてない性能を発揮する可能性を秘めた材料です。その応用を考えているうちに、地球環境との関係にたどり着いたのです。土壌の保水性を高めたり、汚れた水を浄化したり、地球環境に貢献し、それをビジネスに結びつけられる無機ナノ材料の開発を目指しています。化学は、「物質の学問」とも言われます。音楽や文学に精神的な救いがあるように、化学の力で社会や人に物質的な救いをもたらすような仕事をしていきたい。私にとってその最適な場所が、ニコンなのだと思います。
私の2030年のありたい姿
現在取り組んでいる環境に関わる無機ナノ材料の開発を軌道に乗せて、ニコンが掲げる「2030年のありたい姿」の実現に貢献していきたいと思っています。そのためには、この材料に対する理解をさらに深めていくことが欠かせません。さらには、無機ナノ材料という科学に対して自分なりの哲学を持つことも大切だと考えています。また、研究開発を事業として育てていくためには、環境に関わる各分野の動向など、社会の変化にたえず目を配ることも重要です。社会に対しても感度の高い、熟練した研究者を目指したいと思っています。
オフの過ごし方
Off Shot!
動物や植物が大好きで、旅行も好き。月1くらいのペースで、北海道から沖縄まで、全国各地の動物園や水族館、植物園などを巡っています。写真は、動物園ではないですが、北海道・釧路で撮影したタンチョウ。想像していたよりもずっと大きく、頭上を飛び去っていく姿に圧倒されました。
※社員の所属やインタビュー内容は取材当時のものです