再生医療の実用化に向け、株式会社ヘリオスと業務・資本提携関係を拡大
2019年7月10日PRESS RELEASE/報道資料
株式会社ニコン(社長:馬立 稔和、東京都港区、以下「ニコン」)は、株式会社ヘリオス(社長:鍵本 忠尚氏、東京都港区、以下「ヘリオス」)との間において、2017年に締結した業務・資本提携契約に基づく提携関係の拡大について本日付けで合意(以下「本合意」)しました。
本合意に基づき、当社はヘリオスが行う40億円の第三者割当による第2回無担保転換社債型新株予約権付社債を引き受け、提携を拡大させることで、ヘリオスが取り組みを進める再生医療品開発・生産の主要パートナーとして、その早期実用化を後押ししていきます。
ニコンは、両社の持つノウハウや技術を最大限活用し、日本における再生医療実用化の早期実現とともに、人々のQOL(Quality of Life)の向上に貢献していきます。
ヘリオスについて
再生医療は、世界中の難治性疾患の罹患者に対する新たな治療法として期待されている分野であり、製品開発・実用化へむけた取り組みが本格化し、近い将来大きな市場となることが見込まれています。ヘリオスは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)等を用いた再生医薬品開発のフロントランナーであり、実用化の可能性のあるパイプラインを複数保有するバイオテクノロジー企業です。
2011年に設立、2015年に株式上場(東証マザーズ:4593)し、再生医薬品の実用化を目指して研究開発を進めていています。日本国内において、2017年より開始した、幹細胞製品を用いた脳梗塞急性期を対象疾患とした臨床試験に加えて、2019年4月より同製品を用いたARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome:急性呼吸窮迫症候群)に関する治験を実施。また、臓器の基となる臓器原基の移植によって、体内で機能的なヒトの臓器を創り出すiPS細胞技術を用いた再生医薬品の研究開発など、新たなパイプライン創出のための取り組みも進められています。
(詳細は https://www.healios.co.jp/ をご覧ください)
これまでの協業の経緯
当社は2013年8月にヘリオス(当時:株式会社日本網膜研究所)による5億円の第三者割当増資を引き受け、ヘリオスが取り組むiPS細胞技術を利用した加齢黄斑変性の再生医療実現などを支援してきました。2017年2月に締結した業務・資本提携契約に基づき、当社はヘリオスによる20億円の第三者割当増資を引き受けるとともに、両社が有する強みを活かし、再生医療の実用化を推進してきました。
本合意の目的
ニコンは、強みである光学技術および画像解析技術を活用し、細胞の製造プロセス全体を統合的に管理する「細胞品質・培養プロセス評価システム」や「創薬支援サービス」などのソリューションを提供しています。これらのソリューションは、さまざまな現場ですでに採用されています。ニコンの100%子会社である株式会社ニコン・セル・イノベーション(社長:中山 稔之、東京都港区)は、再生医療用および遺伝子治療用細胞における前臨床試験から上市まで、幅広い受託開発・生産のサービスを提供しています。
ニコン・セル・イノベーションは、2017年よりヘリオス、米国のバイオテクノロジー企業Athersys, Inc.(会長兼CEO: Gil Van Bokkelen、本社:米国、以下「アサシス」)と協業し、日本における脳梗塞急性期の治療を目的に治験が進められている体性幹細胞再生医薬品MultiStem®の商用化を目指しています。
MultiStemは、アサシスが開発した成人由来の量産可能な体性幹細胞再生医薬品であり、心血管、神経、炎症、免疫系などの疾患領域における適応症を対象に、臨床段階の複数プログラムが進行しています。アサシスが特許権・特許実施許諾権を保有し、既に進められている複数の治験では、一定の安全性が認められています。
ヘリオスは、現在MultiStemを用いて日本国内にて脳梗塞急性期及びARDSを対象とした2つの治験を実施しています。ニコン・セル・イノベーションは、2017年より進めるMultiStemの受託生産契約に加え、今回、本合意により、日本におけるMultiStemの商用化生産の拡大需要に備え、準備を開始します。また、ヘリオスが自社開発を進めている複数のパイプラインについても、ニコン・セル・イノベーションが受託生産体制の構築を目指し、幅広く協議を開始します。
ニコングループの事業への意味合い
業務・資本提携契約に基づく提携関係を拡大させることにより、当社グループは再生医療用細胞等の受託生産において、幅広い事業機会を得ることとなります。
ヘリオスが日本における再生医療等製品の開発ライセンスを取得し、その再生医療等製品の細胞生産において第三者への製造委託を検討する場合、特定の分野を除いて、当社グループはヘリオスから独占交渉権または優先的な交渉機会を得ます。また、再生医療分野における新規事業展開に資すると考えられる、細胞受託生産や細胞の画像評価等に関するシーズについて、ヘリオスから有益な情報提供を受けることが可能となります。
本合意により、ヘリオスとニコングループが有する技術と知見を最大限活用することで、いまだ有効な治療法のない疾患に対する新たな治療法の提供を目指し、再生医療の実用化の促進および再生医療関連産業の拡大に貢献します。
ARDSについて
ARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome:急性呼吸窮迫症候群)は、単一の疾患ではなく、基礎疾患や外傷等によって好中球等の免疫系が過剰に誘発され、炎症を起こすことによって肺が傷害を受け肺水腫となり、その結果、重度の呼吸不全となる症状の総称です。ARDS診療ガイドラインによると、死亡率は30~58%と予後が非常に悪い病気です。ARDSに対する治療として、集中治療室で人工呼吸器を用いた呼吸管理を中心とする全身管理が行われます。ただ、人工呼吸器の使用が長期化すると、患者の予後が悪くなることが知られています。そのため、ARDSはアンメットメディカルニーズが非常に高く、新たな治療の選択肢が望まれている疾患と言えます。
- *MultiStem®は、アサシス米国による米国およびその他の国における登録商標または商標です。
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