ニコン超解像顕微鏡 「N-SIM」「N-STORM」の発売について
カリフォルニア大学、ハーバード大学とのライセンス契約に合意、従来の光学顕微鏡の解像限界を超える分解能を実現
2009年12月3日PRESS RELEASE/報道資料
株式会社ニコン(社長:苅谷 道郎、東京都千代田区)は、従来の光学顕微鏡では到達することのできなかった高い分解能を実現する、超解像顕微鏡「N-SIM」、「N-STORM」を2010年5月から発売します。
なお、本製品は「第49回米国細胞生物学会」(12月5日~9日、於:米国サンディエゴ)にて発表します。
発売概要
商品名 | 超解像顕微鏡「N-SIM」、「N-STORM」 |
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発売予定日 | 2010年5月 |
開発の背景
生命科学分野の最先端研究において、生きた組織や細胞をより鮮明に観察したいという要望は普遍のものであり、光学顕微鏡は不可欠な機器となっています。しかし、観察の対象物たとえば複数のたんぱく質分子などが、従来の光学顕微鏡の解像限界といわれる約200nm以下に接近している場合、それらを分離して観察することが出来ないため、電子顕微鏡による観察が行われてきました。
今回発表する2つの超解像顕微鏡は、従来の光学顕微鏡の限界を大きく上回る分解能を実現し、生きた細胞の微細構造や分子レベルでの観察が可能になります。これらの超解像顕微鏡技術を通じて、生物、医学、医療の研究機関、大学で行われている最先端研究の更なる発展を支えていきます。
主な特長
超解像顕微鏡【N-SIM】
1. 光学顕微鏡の約2倍の分解能を実現
カリフォルニア大学サンフランシスコ校より、Dr.Mats G.L. Gustafsson (現HHMI:ハワード・ヒューズ医療研究所のJanelia Farm Research Campusグループリーダー) 、Dr.John W. Sedat、Dr.David A Agard (現HHMIの研究員) による超解像顕微鏡技術「Structured Illumination Microscopy」のライセンスを受け、ニコン独自の光学技術、製造技術を利用した「APO TIRF100XH対物レンズ」(NA=1.49)を組み合わせることで分解能を従来の光学顕微鏡の約2倍に高めました。
2. 業界最速*0.6秒/枚の時間分解能を実現
超解像顕微鏡では業界最速の時間分解能 0.6秒/枚を実現し、ライブセルイメージングにも使用することが出来ます。
- *2009年12月2日時点で発売されている超解像顕微鏡において
3. TIRF-SIM、3D-SIMにより、多彩な観察方法を提供
「TIRF‐SIM」の開発により、従来のTIRF顕微鏡と比べ、より高い分解能での全反射照明による蛍光観察が行えます。これにより、細胞膜近傍のより詳細な構造を観察することができます。さらに「3D-SIM」の開発により、標本のセクショニング画像生成が可能であり、細胞内部のより詳細な構造観察が行えます。
超解像顕微鏡【N-STORM】
1. 光学顕微鏡の一桁下の分解能を実現
ハーバード大学より、Dr.Xiaowei Zhuangによる超解像顕微鏡技術、「Stochastic Optical Reconstruction Microscopy」のライセンスを受け、分解能を従来の光学顕微鏡の10倍以上に高めました。
2. 1分子画像の重ね合わせによる画像構築
STORM技術は、複数枚撮影された蛍光画像から高精度に検出された蛍光色素1分子ごとの位置情報を重ね合わせることにより、高分解能の一枚の蛍光画像(2Dまたは3D)を再構築するという新しい技術です。これにより、従来の「構造レベルの理解」からさらに「分子レベルの理解」に踏み込んだ情報を生物標本から得ることができるようになります。
3. 3次元情報の取得が可能
「N-STORM」では、2次元の高分解蛍光画像が取得できることに加え、光学系の簡単な切り替え操作により、同一標本における高分解の3次元蛍光画像が取得できます。
「N-SIM」と従来の光学顕微鏡との画像比較
MitoTrachker Redで染色した、NIH3T3生細胞のミトコンドリア。総合倍率は250倍。
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