COO & CFOメッセージ

2024年8月

中期経営計画に沿ったオペレーションと財務運営で企業価値の向上を目指します。代表取締役 兼 社長執行役員COO 兼 CFO 德成旨亮

COO 兼 CFOとして

2024年4月から社長執行役員COO 兼 CFOに就任しました。馬立が会長執行役員CEOとして全体戦略に責任を持ち、私が全社の業務運営(オペレーション)と財務運営を遂行する役割を担います。
ニコンは新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2020年度には売上収益が4,512億円、営業損失562億円、親会社の所有者に帰属する当期損失344億円と100年を超える当社の歴史のなかで最大の損失を計上しましたが、その後、売上収益7,000億円台まで回復しました。
中期経営計画(2022~2025年度)で掲げた2030年のありたい姿「人と機械が共創する社会の中心企業」になることを目指した戦略や諸施策もおおむね順調に推移しています。
しかし、私はニコンがさらに持続的に成長していくためには、従来以上に経営基盤を強化する必要があると考えています。すなわち、人材の獲得・育成・活躍を基軸に据えた人的資本経営や「創造(事業)」を通じた社会への貢献を旗印に掲げたサステナビリティ戦略を着実に進めるとともに、過去において必ずしも十分ではなかったIT/DX投資や全事業を支える生産拠点の整備などのものづくりへの投資を進めます。さらに、海外の出資先・子会社を含むグループガバナンスの強化、グローバルコンプライアンス体制を整備していきます。
このような経営基盤の強化には支出が伴います。具体的には、2030年までの間にIT/DX投資には約300億円、生産拠点の整備には約1,000億円が必要になると考えています。
こうした投資や支出を計画的に行う一方で、各年度の収益もしっかりと確保する必要があります。この両方のバランスを合理的に考え、実務を遂行することが、COO(業務運営)とCFO(財務運営)を兼ねる私のミッションであると考えています。
中期経営計画に沿ったオペレーションと財務運営をおこなうことで、持続的な企業価値の向上を目指します。

2023年度の振り返り

中期経営計画2年目にあたる2023年度の業績は、売上収益7,172億円(前年比891億円増)、営業利益397億円(同152億円減)、親会社の所有者に帰属する当期利益325億円(同124億円減)と、増収ながら減益となり、ROEは5.0%となりました。
映像事業は好調を維持し増益となったものの、FPD露光装置の販売台数やサービス収益が減少した精機事業やコンポーネント事業の減益に加え、ヘルスケア事業やデジタルマニュファクチャリング事業で一時費用が発生したこと等により、全体で減益となりました。
戦略面では、映像事業において業務用シネマカメラ分野で独自の顧客と技術を持つ米国のRED.com, LLC(以下、RED社)の子会社化を発表し、業務用動画機市場開拓に向け大きな一歩を踏み出しました。また、戦略事業に位置付けているデジタルマニュファクチャリング事業では、子会社化したドイツの金属3DプリンターメーカーNikon SLM Solutions AG(以下、SLM社)を含むアディティブマニュファクチャリング事業をグローバルに統括するNikon Advanced Manufacturing Inc.を米国に設立し、事業拡大を図りました。

2024年度と中期経営計画最終年度である2025年度の見通し
(2024年5月公表内容)

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2024年度通期の売上収益は7,450億円、営業利益は350億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は300億円と、増収減益を見込みます。 増収は、ヘルスケア事業やデジタルマニュファクチャリング事業でさらなるビジネス拡大を見込むことに加え、映像事業におけるミラーレスカメラおよび交換レンズの販売数量増加やRED社の連結化によるものです。
一方、減益となるのは、ヘルスケア事業・デジタルマニュファクチャリング事業の増益および一時費用の減少を、RED社買収に伴う費用増を主因とする映像事業の減益や全社費用の増加が上回るためです。ただし、一過性費用である新本社移転費用約50億円を除く実質的な営業利益は前年度並みとなる見込みです。

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中期経営計画最終年度である2025年度は、2024年度に比べ、各事業で業容拡大が見込まれ、本社移転費用などの一時費用も剥落することから、増収増益を見込んでいます。
さらに、2030年度に向けては、2026年度に営業利益の黒字化が期待されるデジタルマニュファクチャリング事業を含む5つの事業すべてでさらなるビジネス拡大を目指す方針です。

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資本配分―基盤強化のための投資と株主還元の一層の充実

こうした中期経営計画に基づいた成長を実現するための資本配分ですが、自己資本比率50%台後半を維持した上で、中期経営計画期間4年間累計での配分可能原資約7,700億円のうち3,000億円をR&Dに、2,200億円を設備投資に振り向けます。
R&Dは、買収したSLM社およびRED社における研究開発費も含め増額し、設備投資はカメラから顕微鏡さらには露光装置に用いられる各種レンズの生産能力を増強するとともに、半導体向けを中心とするコンポーネント事業の生産能力を拡大する計画です。

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同時に、株主還元も充実させます。1株当たり配当は中期経営計画最終年度の年間60円配当に向け、段階的に増加させてきており、2024年度も前年比5円増配の年間55円配当とする予定です。
また、政策保有株式の売却を順次進めており、その売却等で創出する現預金を原資に、中期経営計画期間中に300億円以上の自己株式取得を機動的に実施する方針です。
従来以上に、バランスシートやキャッシュ・フローを重視した経営を全社に浸透させることで、資金効率や資本効率の改善を図ります。

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COOとCFOを兼務する利点を最大限生かし、持続的にニコンの企業価値を向上させることで、当社を取り巻くすべてのステークホルダーの皆様のご期待に応えていきたいと考えています。
ご理解、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。