CEOメッセージ

2024年8月

新たな経営体制で「ありたい姿」の実現を目指します。代表取締役 兼 会長執行役員CEO 馬立稔和

2019年6月に私が代表取締役兼社長執行役員に就任以来、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響をはじめ、地政学リスクの顕在化など深刻な状況に直面しながらも、ニコンは着実に歩みを進め、5年間で相応の成果を上げることができました。これは、ステークホルダーの皆様のご協力、ご支援によるものと心より感謝しています。
一方で、さらなる成長のためには課題も少なくありません。国内外の投資案件の増加による収益管理やリスク管理、内部統制の強化、グローバルコンプライアンスの推進を含めて、グループ全体の力を一段引き上げる必要があります。このような課題に対応するため、2024年4月、CFOとして財務にとどまらない視点で全社戦略を推進してきた德成を社長執行役員COO 兼 CFOとし、私が会長執行役員CEOとなる経営体制に移行しました。
私と德成の2人が両輪となることで、中期経営計画の達成ならびにその先の成長を目指していきたいと考えています。

中期経営計画の全体像

2022年4月に発表した中期経営計画(2022~2025年度)では、まず2030年のありたい姿をイメージし、その実現に向けて2025年に到達するべき目標を定め、その実現に向けた戦略と施策を策定しました。

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中期経営計画の進捗状況

中期経営計画は2023年度時点で計画最終年度の売上収益目標7,000億円を2年前倒しで達成するなど、順調に推移しています。この間、金属3Dプリンター大手のドイツ SLM Solutions Group AG (現 Nikon SLM Solutions AG、 以下、SLM社)や業務用シネマカメラで有名な米国RED.com, LLC (以下、RED社)などのM&Aにより、成長ドライバーを拡充しています。

今後は成長投資の中身を見直し、オーガニック成長のための投資を拡大するとともに、経営管理の強化を図る方針です。

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2024年度の事業収益見通しは、本社移転の関連一時費用を除外すれば、2023年度と同水準の400億円程度の営業利益を見込んでいます。中期経営計画最終年度の2025年度にかけては、映像事業が高収益を維持することに加え、他の4事業での収益改善が見込まれ、ROE8%以上の実現を目指します。

事業別の進捗状況

映像事業

映像事業は、ミラーレスカメラのフラッグシップモデル「Z 9」の先進機能を展開した新製品「Z 8」、「Z f」の販売が好調に推移し、レンズ交換式デジタルカメラ・交換レンズともに販売数量を伸ばしています。今後も、趣味・プロ層向け中高級機の市場投入を計画しており、コアファンに加え、新規ユーザー、特に若年層の拡大に注力する方針です。また、今後市場の拡大が予想される動画機においては、業務用としてハリウッド等で支持されているRED社の先進技術を活かした新たな価値を提供することで、事業領域の拡大と収益源の獲得を目指します。

ヘルスケア事業

ヘルスケア事業は、売上の6割弱を占める「ライフサイエンス」における生物顕微鏡では民間企業向けビジネスの開拓を進めています。また高単価のシステム顕微鏡比率を4割超に伸ばすことを目指しています。創薬支援サービスではアプリケーションの拡充と病理診断のDX化を推進し、顕微鏡の拡販につなげる方針です。「細胞受託生産」では、大手製薬企業から再生医療ベンチャーまで幅広い顧客のプロジェクトを受託し、複数の商用化が始まっています。「アイケア」における世界シェア3割超の眼底カメラと合わせ、3つのビジネスで、売上1,000億円、営業利益100億円規模の安定達成を目指します。

精機事業

精機事業では、FPD露光装置は高精細・高生産性の新型装置の拡販が進み、韓国・中国で市場シェアを拡大しています。半導体露光装置は、北米主要顧客に加え、国内・アジアで顧客の多様化に成功しつつあります。FPD露光装置・半導体露光装置ともに、インストールベースを活かし、保守・移設などのサービスビジネスで着実に収益を確保する方針です。今後とも、モデル刷新を推進し製品ポートフォリオを再強化することで、中長期的なビジネス拡大を目指します。

コンポーネント事業

コンポーネント事業においては、半導体関連で進展する高度化・微細化に伴い、ニコンの光学コンポーネントやEUV関連コンポーネントなどの採用が進展しています。2024年4月に顧客セグメント及び製品の関連性が高い産業機器事業部とデジタルソリューションズ事業部を統合し、インダストリアルソリューションズ事業部を新設しました。測定・検査装置の事業をコンポーネント事業に統合することで、完成品・サービス・コンポーネント一体のソリューション提供体制をグローバルに強化し、事業領域の拡大を進めていきます。

デジタルマニュファクチャリング事業

デジタルマニュファクチャリング事業では、SLM社の子会社化により、150社以上の顧客基盤を獲得しました。今後、最大市場の米国に築いたアプリケーション開発拠点を活かし、防衛・航空宇宙市場を中心に、大型部品造形に強いSLM社の高速・高精度の金属3Dプリンターの拡販に注力します。
デジタルマニュファクチャリング事業は、2025年度のEBITDA黒字化、2026年度に営業利益黒字化を目指します。

経営基盤強化の進捗状況

ビジネスの拡大を中長期的に支えるためには、経営基盤を強化する必要があります。人的資本経営やサステナビリティ戦略において着実な改善を進めるとともに、DX、ものづくりへの投資やグループ経営管理の強化に注力します。

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  1. DEI=ダイバーシティ, エクイティ&インクルージョン
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サステナビリティ戦略

ニコンのサステナビリティ推進活動は、外部から高い評価を得ています。マテリアリティ(重点課題)のうち社会・労働では、2023年4月に「Nikon Global Diversity, Equity & Inclusion Policy」を制定し、共に働くメンバーの個性や能力を活かし合うことのできる職場環境や企業文化の醸成を目指して浸透活動を展開しています。
環境関連では、温室効果ガスの削減率や再生可能エネルギーの利用率は、中期経営計画を上回って推移しています。これを受け、再生可能エネルギー率100%の達成目標年度を2050年度から2030年度に前倒ししました。
今後とも、持続可能な社会への貢献とニコンの持続的な成長の双方を目指します。

人的資本経営

2030年のありたい姿を実現するためには、人材は最も重要な経営資源です。ニコンでは、人材の「獲得」、「育成」、「活躍」の3つを柱とし、経営戦略と人材戦略を一体で進めています。人材の「獲得」では、2年連続で600名超の人材を迎え入れました。一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境を整えるとともに、従業員の自覚を促すことにより、自律的に人材が「育成」され、「活躍」できる企業でありたい、と考えています。

顧客・従業員重視のDX

DX推進については、DX人材の獲得に注力するとともに、デジタルマーケティング機能の強化や、事業を横断したBtoB統合サイトの開設を進めています。また、2030年に向けて300億円規模を投じ、基幹システムの刷新を開始しています。

ものづくり

ものづくりはニコンの原点です。全社戦略である収益拡大をしっかりと支えるために生産拠点の整備に力を入れていきます。事業環境が大きく変化し、各事業における需要変動が高まるなか、2030年に向けて1,000億円規模を投じて、フレキシブルで効率性の高い工場を目指し、生産拠点の整備計画を進めます。特にニコン製品の生命線ともいえるレンズの生産能力増強などを行います。

経営管理

海外の出資先・子会社が増えるなか、グループガバナンスの強化、グローバルコンプライアンス体制の整備が急務となっています。専門性の高い人材の獲得や組織体制の整備を進め、第2、第3のディフェンスラインを強化します。
また、コーポレート・ガバナンスの実効性も一段と高めていく方針です。

ありたい姿の実現へ

ニコンは、1917年の設立以来、光の可能性に挑み、お客様の信頼と期待に応えながら、新たな価値を創造してきました。私たちは、お客様の欲しいモノやコトをお客様にとって最適な方法で実現するため、お客様が真に求めるものは何かを常に考え、完成品・サービス・コンポーネント一体でのソリューションを提供します。そして、新しい経営体制で、「人と機械が共創する社会の中心企業」を目指してまいります。